読書: DRiVE
長期的な生き甲斐は、お金よりも、自立と成長と貢献への欲求を満たすことで高まるよ、というお話。
Drive: The Surprising Truth About What Motivates Us
- 作者: Daniel H. Pink
- 出版社/メーカー: Riverhead Books
- 発売日: 2009/12/29
- メディア: ハードカバー
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「もし〜できたら、〜をあげるよ」といったふうに、お金やご褒美などをチラつかせて人を駆り立てるのは、アメとムチで知られる一般的なマネージメント手法です。著者はこれを Motivation 2.0 と呼び、こういった外的動機が適切な場合と、そうでない場合を説きます*1。
例えば、ある種の単純な作業に対しては、Motivation 2.0 は有効に機能します。しかし、非定型的で創造的な仕事に対しては、うまくいかない。それどころか、悪い結果を生み出すケースもある。
現代社会では、単純作業が外部委託されたり、IT の普及により自動化された結果、頭を使う仕事の比率が高まっています。こういう状況の中で、古い Motivation 2.0 を使い続けるのはふさわしくない。そこで著者は、各個人の内側から生じる動機を行動の原動力としていこうという Motivation 3.0 を提唱します。
ある行動に対する内的動機を高めるには三つの条件があります。一つは、行動が自立的であること、ある結果を達成する過程における自由度が高いこと。次に、ある行動に習熟することでより良い結果を生み出せること、上達による成長を実感できること。そして最後に、その行動の目的や結果が社会貢献や他者の幸せに関わっていること。
この三つの条件を満たせるような環境を作り、各個人の内的動機を信頼・尊重することで、外的動機では為し得ないような結果を達成することができるとしています。20% ルールなどはまさに、これを実践しているわけですね。
AquaSKK のメンテナとして、自立、成長、貢献の各側面における充実は感じているところなので、個人的には、大いにうなずける内容でした。ただ、Motivation 3.0 が向く職場もあれば、そうでないところもあると思います。特に日本では、個人の自立性よりも協調性を求められる場面が多いんじゃないでしょうか。難しいところですけど、Motivation 3.0 的な感覚を持つ人が増えてくれば、だんだんと変わっていくんでしょうね。
素朴な疑問としては、ウォール街のような場所では、Motivation 2.0 が未だに強力に機能しているように見えることです。最近では High Frequency Trading System などのコンピュータによる超高速売買が台頭してきているようなので、将来的には変わっていくのかもしれませんが、高額報酬を目当てにガンガン働いて成果を出していく人は、いつの時代も一定数いるのかなと。
それから、既得権益に群がる人々というのも、いかにして既得権益を守るか、という方面において実に素晴しい頭のキレと粘り強さを見せていると思います。その背後には Motivation 3.0 とは違った秘密が作用していると思うのですが、本書ではそのあたりの疑問に答えていません。
関連して、内的動機の存在は科学的に証明されていないよ、という研究者の話もあったりします。
http://www.sciencedaily.com/releases/2005/05/050509173611.htm
人の行動原理は実に様々なので、内的動機と外的動機の二つで全てが説明できるわけではない、冷静になりましょう、といった内容。
そしてこちらは、DRiVE の中でも紹介されている Motivation 3.0 的企業 Zappos 創業者が語る、Amazon への身売りに関する顛末。企業文化を守るため、長期的な視野に立って決断をする。なかなかカッコイイですが、起業文化も行き過ぎると宗教と区別がつかなくなりそうな感があります。
http://www.inc.com/magazine/20100601/why-i-sold-zappos.html
七夕には邦訳も出るようですので、日本語が得意な自己啓発マニアは手に取ってみるのも良いかもしれません。
モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか
- 作者: ダニエル・ピンク,大前研一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/07/07
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時間がないなら、紹介動画でも十分楽しめます。
*1:ちなみに Motivation 1.0 というのは、生命を脅かす危機を回避しようとする行動原理のことだとか